同じ航路でも、行きと帰りでフライト時間が違う理由とは?

アメリカへ旅行に出かけた人が、こんなことをいっていたことがあります。「行きのフライトは楽だったのに、帰りのフライトはけっこう長く感じられた。旅先でさんざん遊んで疲れたせいかな・・・」と。

帰りのフライトが長いのは「気のせい」ではなく、事実です。実際に、成田→ニューヨークの所要時間は約12時間20分、ニューヨーク→成田の所要時間は約13時間40分と、その差は1時間20分にもなります。

同じ飛行ルートを飛んでいるのに、なぜこれほどの差が生まれるのでしょうか。これは、「ジェット気流」(偏西風)の仕業です。ジェット気流は、中緯度(30~50度)付近の対流圏上部から成層圏下部(高度1万1000m前後)の上空を、西から東に向かって吹く強風のこと。

北極の上空(地球儀の上のほう)から見ると、帯状を示したジェット気流の強風域が、北極の周りを川のように蛇行しながら回っている形になっています。その帯の幅は100kmにもわたり、風速は通常、秒速30m(時速約110km)程度、強いときでは秒速100m(時速約360km)になることもあります。

もし、旅客機がこの強風をまともに受けて飛行したら、大きく減速させられ、遅々として目的地に着かないばかりか、燃料も相当消費させられることになります。逆に、ジェット気流を追い風に使うことができれば、これは強力な「助っ人」となります。

風が目的地まで運んでくれるので、旅客機自体の推力(エンジンパワー)に頼る必要がなく、燃費もかからないうえ、速く着けるというわけです。

ジェット気流を追い風に使えるなら、「空飛ぶじゅうたん」に乗っているようなもの。つまり、ジェット気流を向かい風で受けるようなルートはできるだけ避けるよう考慮され、追い風として利用できるときは極力利用するのが一般的です。

成田~ニューヨーク間の飛行時間の差も、ジェット気流を追い風にできるニューヨーク行きは短くてすみ、向かい風としての影響を受けやすい成田行きでは長くなってしまうということです。さらに、ジェット気流は冬に強まり、夏に弱まるという特徴があります。したがって、季節ごとの飛行時間を比較すると、成田→ニューヨークでは、冬期のほうが夏期よりもさらに短く、ニューヨーク→成田では、夏期よりも冬期のほうがさらに長くなる傾向があります。

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