高度を正確に知るための気圧高度計の修正方法

◆高度を正確に知るための気圧高度計の修正方法

飛行機の高度計は、ひと昔前までは気圧計に目盛をつけた気圧高度計を使っていました。この気圧高度計を使うメリットは、重力のおかげで上空になるにしたがって規則正しく数値が小さくなっていくこと、小さな装置で比較的簡単に測定できること。唯一のデメリットは、毎日気圧配置が変わることからもわかるように気圧はいつも一定ではないことです。

このため早朝の始発便の出発前点検の際などに、本来なら空港の標高を指示しなければならない高度計が、あらぬ指示をしていることがよくありました。そこでこの高度計は、気圧の変化に合わせて原点を修正できるようにしているのです。

この高度計の原点を修正することを、高度計規正(アルティメタセッティング)と呼び、地上での高度計の指示が空港の標高となるような気圧の規正値をQNH(低い高度を飛行する際の規正値)と呼びます。

例えば、昨日のフライトで羽田空港に着率した際に空港の標高である21フィート(6.4m)を正確に指示していた高度計が、今日の出発前点検では450フィート(137m)を指示している場合がありますが、これは昨日1013hPaの高気圧だったのが今日は997hPaと、低気圧に変化したため。

このため、原点を修正するノブで997hPaにセットすると針は戻って空港の標高である21フィート(6.4m)を指示するようになります。なお、この例でのQNHは997hPaとなります。

◆規正値QNEにセットする意味とフライトレベル

飛行機が上昇し高度が14,000フィート(4,267m)に達すると、パイロットは高度計を1013hPaにセットます。なぜならば、仮に997hPaのままだとすると450フィートも違った状態でフライトすることになってしまうためです。この高度計規正値1013hPaをQNE(高い高度や海上を飛行する場合の規正値)と呼び、パイロットは「1013(または2992)」とコールアウトして、左右の高度計が1013hPaにセットされているかを確認し合います。

たとえ地上の気圧が1013hPaでなかったとしてもこのQNEにセットすれば、すべての飛行機が1013hPaを原点とした高度でフライトするので、高度間隔は守られることになります。なお、このQNEにセットしなければならない高度は国により異なり、英国では6,000フィート(1,829m)、メートル単位の中国では3,000m(9,842フィート)、シンガポールやタイでは11,000フィート(3,353m)、米国では18,000フィート(5,486m)以上となっています。

このQNEで規正した高度のことをフライトレベルと呼びますが、100以下の単位を省略して単位はつけないため、例えば「35,000フィート」は「フライトレベル350(スリーファイブゼロ)」と表現します。

なお、この高度以下では管制機関から提供されるエリアQNHと呼ばれる近辺の気圧の規正値をセットし、そのたびに飛行高度を修正しながらフライトしています。

◆国や空港によって異なる気圧高度計の補正方法

空港へ着陸のために進入する際には必ず管制官からQNH(低い高度を飛行する場合の規制値)が通常されますので、正しいQNHをセットすることにより、高度計は実際の高度(海面からの高度、標高)を指示するようになります。

日本では14,000フィート(約4,300m)未満になると高度計をQNHにセットしますが、例えばQNHが1008hPaの場合には「1008または2977(水銀柱インチ)」とコールアウトしながら左右の高度計規制値が正しくセットされているかを確認し合います。

なお、日本では上昇中でも降下中でも14,000フィート以上でGNE(高い高度や海上を飛行する場合の規制値)にセットし、14,000フィート未満でQNHにセットするようになっていますが、これは国によってさまざまな高度の幅があります。

例えば、シンガポールでは上昇中は11,000フィート以上でQNEにセットし、降下中であれば13,000フィート以下でQNHにセットしますが、ヨーロッパ諸国では降下中に管制官から「QNH1008」といった指示があった時にQNHにセットするようになっています。

また、QNHは着陸すると高度計は空港の標高を指示しますが、着陸すると高度計がゼロを指示するQFEと呼ばれる方式もあります。日本では採用していませんが、空港近くの海面気圧値ではなく、空港の気圧値をセットする方式で、QFEをセットした高度計は空港から空港からの気圧値を指示することになるため、空港に着陸すると高度計の指示はゼロになるのです。

このような気圧高度計を補正する方法(アルチメタ・セッティング)は国や空港により大きく異なるため、ブリーフィングの時にはセットする方法の確認も重要となります。

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