航空機向け部品製造分野での日本の存在感

最近の国内の航空機産業というと、MRJの国産初ジェット機開発のニュースをよく見聞きしますが、近年日本の航空産業は航空機部品生産分野で急成長しているのです。

航空機部品を供給する有名企業としては、三菱重工や川崎重工が機体の一部の生産を担当している他、ナブテスコが制御装置、IHI(石川島播磨重工)は航空機エンジンを生産していて、ボーイングなど外国製旅客機メーカーへの部品生産などで活況を呈しています。

なかでもボーイング社の最新鋭旅客機B777Xについては、その部品の多くが日本で生産されているため、日本のメーカーは生産設備を増強しています。

川崎重工では胴体の一部を生産しており、250億円を投じて名古屋第1工場および岐阜工場を増強します。

従来は手作業で行っていた穴あけなどの作業にロボットを導入し、生産体制の強化を図っていくとのことです。

同じくB777Xの胴体などを生産する三菱重工業についても、広島工場に自動搬送装置やロボットを導入する予定となっています。

また、東レが開発した航空機用の炭素繊維はB777Xの主翼部分に使用されることになっており、東レでは1,000億円の設備投資を行い、アメリカ本土のサウスカロライナ州に新工場を建設する予定です。

一般的にあまり知られてはいませんが、日本のナブテスコはB777、B747-8、B777X向けに制御用システムを供給しています。

実はナブテスコは、航空機の一部であるエルロン、フラップ、ラダー、スポイラー、エレベーター等のアクチュエーターの部門では世界的トップブランド。

油圧は小さな動力を元に大きな力を生み出す事ができ、油圧の圧力を最終的に運動エネルギーに変換するのがアクチュエーターであり、油圧や電力などのエネルギーを主翼や垂直尾翼の可動部分の動きに変換する技術を用いて、現代の旅客機は多くの可動部分が油圧で制御されています。

ナブテスコはこの分野に高度な制御技術を有しており、工業用ロボットや新幹線から来ているこの技術は、重機や船舶、風力発電などにも広く使用されているとのことです。

B777Xでは全体の21%もの構造部品を三菱重工業、川崎重工業、富士重工業、新明和工業、日本飛行機の日本企業が担当しています。

また、フランス・エアバス社の最新型旅客機A320neoの一部部品についてもIHIが製造し、新工場を長野県に建設する予定となっています。

三菱重工業の2016年3月期の決算は、航空機など交通部門が前年比92%増の450億円と予測、3期連続の過去最高益、営業利益3,200億円を見込んでいます。

子会社の三菱航空機が製造するMRJの事業については、今後10年は赤字、利益が出るのは10年目以降であると予測されています。

航空機製造については軌道に乗れば利益が大きいが、初期投資も大きく、利益が出るまではリスクが高い事業といえるでしょう。

自衛隊用の航空機エンジンや旅客機用部品を製造しているIHIでは、エンジン製造部門については赤字だといいます。

エンジンを設計・開発して販売しても、投資金額が巨額のため完全赤字となることから、アフターサービスで利益を得ているそうです。

旅客機の寿命は完璧に整備を継続していけば20年以上使い続けることができますが、15年ほどを過ぎると経年劣化により整備費用が嵩み、新型機の購入費用より高くなることがしばしば。

そのため、日本国内のエアラインでは15年もすると機体を入れ替える会社がほとんどですが、その古い機材は海外のエアラインに渡り、まだまだ活躍します。

およそ20年から30年で引退するまでの間、エンジンは使い続けることになるため、エンジンメーカーはそのサービス費用で利益を得ているのです。

IHIのエンジンは10年先まで開発計画が埋まっていて、新たに受注できないほどの人気だそうです。

自衛隊の哨戒機、ステルス実証機、A320、B777等のエンジン開発のほか、外国企業との共同開発件数もとても多いようです。

先進国で通用するエンジンを製造しているのは現在アメリカとイギリスだけとなっているため、一度参入すればその利益も大きく、航空機産業は参入のハードルが高いだけに新規参入や競合他社も少なく、手厚く守られているとも言えるでしょう。

現在世界の航空機産業に占める日本の占有率は4%ほどに過ぎませんが、政府は2035年には20%にする目標を立てています。

MRJの飛行成功で国産航空機への期待が高まっていますが、MRJのエンジンは残念ながら海外メーカー製のようです。

せっかくの国産旅客機ですので、国内部品供給比率を上げると、いっそう部品生産国としての存在感向上に一役買うのではないでしょうか。

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