ベテランパイロットでも恐れる「ウインドシア」とは?

飛行機の運航にとって気象状況はとても重要な点となりますが、雨や雪以上に注視すべきなのは風。特に離着陸時には注意が必要で、突拍子もない風でも吹けば、腕のあるパイロットでも回避が困難といわれています。

気象状況に応じて風は姿を変え、予測不能の風が原因で航空機事故を招くことも珍しくない中、一番恐れられているのが風速や風向きが急激に変化する「ウインドシア」という現象。

飛行機は強い向かい風を受けると、揚力が増加して機体が上昇しますが、強い追い風を受けると揚力が低下し、機体が降下してしまいます。

また、横風、上昇気流、下降気流が強い場合では、機体のバランスが崩され、不安定な状況に陥ってしまいます。つまり、風速や風向きが急激に変化するウインドシアが発生するということは、機体が上昇・下降することや、不安定な状態になる可能性を意味し、航空機事故を引き起こす恐れがあります。

とはいえ、高いレベルの高度を飛行しているときには、そのスピードに対して風の変化量が小さいことから、ウインドシアが起きても大した影響はありません。問題なのは低いレベルの高度を飛行しているときにウインドシアが発生することで、その影響を強く受けてしまい、とても危険です。

例えば、着陸態勢に入った飛行機は高度が低く、且つスピードも落ちています。このときウインドシアが発生した場合、回復措置をとる前に機体が急激に降下し、地面に叩きつけられるハードランディング(硬着陸)や、最悪のケースでは墜落する可能性もあります。

過去の事例では、2006年の成田空港にて、ウインドシアの影響により開港以来最多の82便が着陸できずに出発地へ引き返すことや、代替空港への着陸を余儀なくされました。また2009年には、アメリカのフェデックス貨物機が成田空港への着陸に失敗、滑走路からそれた場所で大破炎上する大事故が起き、これもまたウインドシアが原因とされています。

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