減速の方法は色々ある!それぞれの装置の役割
滑走路上に接地すると、最初にスピードブレーキ・レバーが自動的に作動し、全てのスポイラーが一斉に立ち上がります。接地直後、まだ速度が出ている状態で作動するのは空気抵抗を増やすためでもありますが、主には揚力を減少させ、飛行機の重みをタイヤに任せ、滑走路との摩擦を大きくすることで、車輪ブレーキの利きをよくすることが目的です。
例えばボーイングB747は、車輪ブレーキだけで着陸する場合の着陸距離は1,540mですが、スポイラーとブレーキを組み合わせることにより、1,180mにまで、360mも短くすることができます。
車輪ブレーキは、接地後、タイヤの回転を感知することで、あらかじめ設定された減速率に従って自動的に作動するようになっています。タイヤが回転を始める前にブレーキが作動してしまうと、タイヤがパンクしてしまう可能性があるため、空中ではブレーキが作動しないようにするための保護機能が搭載されています。ちなみに、ラダーペダルの上部を足で踏みこむことで、自動ブレーキが解除され、ペダルでブレーキを作動させることができるようになっています。
唯一、パイロットが手動で作動させることになっているのが、スラスト・リバーサーと呼ばれるエンジン逆噴射装置です。逆噴射装置は滑走路面と接していないため、特に滑走路が滑りやすい状態のときなどに制動効果を発揮しやすくなります。
しかし、エンジン故障時においては、左右非対称の制動力となってしまい、滑走路上での直進制御に問題が生じるため、使用しないことになっています。また、同じ理由により、4エンジン機であるA380には、内側の2つのエンジンにのみ逆噴射装置が装備されており、外側の2つのエンジンには装備されていません。
なお、エアバス機とボーイング機では、レバーの位置や名称は違っても、制動装置の種類や作動などは全く同じになっています。