旅客機の客室が離着陸時に暗くなる本当の理由とは?

離着陸が夜間になった際は、機内の照明が少し落とされて暗くなります。夜間フライト中のコックピット内は、離着陸時にかぎらず常に暗く照明を落としています。

夜間離陸のときは機体が上昇を終え、安定飛行できる高度に達するまで、夜間着陸のときは高度を落として最終の着陸態勢に入り、機体が停止するまでのあいだ、照明は暗くしてあります。

これを、離着陸はたくさんの電力が必要で、すこしでもそちらに電力を使いたいから客室の照明を暗くしてるのだと考えている人がいましたが、そうではありません。

もし夜間の離着陸時になにかあって、緊急脱出しなければならない、となったら。そういう時に備えての配慮なのです。

夜、室内の照明をすべて消して寝床に入るとき、明るい部屋をいきなり真っ暗にすると、周りのすべての物が見えなくなります。どこに何があるか、だいたい知ってる部屋だとしても、暗さに目がなれないうちは、うっかり歩いては危ないくらいです。

安全に歩くためには、暗闇に目が慣れるまで、しばらく待っていなければなりません。それを待ってからなら、暗いままでも周囲の様子が少し見えるようになってきます。

室内でもそれですから、もし夜の旅客機の機内を明るいままにしておいたら、急なことがあったとき、明るい機内から、いきなり夜で真っ暗の機外へと脱出することになってしまいます。

そうすると、暗さに目がなれる時間が取れないまま、状況のわからない夜の屋外に出ることになりますから、危険なのです。それも、緊急時ですから、全く予期しない場所かもしれません。だいたいのようすを知っている暗い室内を歩くのとは、全く違います。

夜の旅客機が暗くしてあるのは、そういったことに配慮し、暗さに目をならしておき、いざという時にそなえてのことなのです。

どのような工夫なのか、一つずつを説明される機会はあまりありませんが、旅客機のしくみはあれもこれも、乗客の安全なフライトのために、考えに考えて作られているのです。

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