羽田空港C滑走路、たった360mといえど大きな意味がある延伸

『笑っていいとも』の終了によってタモリさんに自由な時間ができたおかげで、遠隔地ロケが可能となったためにNHKの人気番組『ブラタモリ』が今年復活しました。

以前のシリーズではタモリさんのスケジュールの都合で首都圏の各地を巡っていましたが、その中で羽田空港が取り上げられたことがあります。

羽田回では、タモリさん一行は羽田空港で一番新しいD滑走路を歩き、外から見ただけではわからない滑走路の様々な機能や工夫も紹介されました。

一見ただの平面で、自動車用の一般道とあまり変わらないように見える滑走路も、雨天での排水効率を高めるために路面が微妙に斜めになっていたり、細かい溝が掘られていることなどが羽田空港の職員さんによって解説されていました。

滑走路にある細かい溝はグルービングといって、排水効率を高めるとともに飛行機のタイヤとのグリップ性能を高め、タイヤが水の膜でから滑りする「ハイドロプレーニング現象」を防ぎ、ブレーキを効きやすくするという役目もあります。滑走路のグルービングは、深さ、幅、間隔などに基準があって、それに従い規則正しく掘られています。

そのD滑走路の中程あたりから、ほぼ垂直方面に伸びているのが、C滑走路です。羽田空港は2014年12月にC滑走路の改修・延伸工事を終え、運用を開始しました。これは、2020年の東京オリンピックへ向けて外国人訪日客を増やすための受け入れ態勢を整えるという政府の方針の一環です。

○羽田空港C滑走路が耐震強化

C滑走路に行われた最も重要な改修は耐震性能の強化で、液状化対策の重要度は最も高いものでした。2011年の東日本大震災では、埋立地の浦安市で大規模な液状化現象が起こり、道路の陥没などが起こっています。

一般住宅地とは施工の強度が違うとはいえ、大規模震災時でも災害救助などのために即座の運用が要求される空港では、液状化対策は急を要する課題でした。

今回の工事では、地盤の浸水性を減らす硬化剤などを液状化層に注入する「薬液注入工法」と、砂やコンクリ廃材などを土壌に入れて圧し固める「静的締固め工法」が行われました。

○C滑走路を360m延伸

もう一つ行われた工事が、海側の南方面に向けての滑走路の延伸です。これまで3,000mだったC滑走路は、360m伸ばされ、3,360mになりました。わずか360mの延伸ですが、この数字には大きな意味があります。

滑走路の長さを決定する基準はいくつかありますが、ごく大雑把に言うとポイントは3つ。

まず、飛行機が離陸するために必要な速度=離陸決心速度をかせぐための距離が確保される必要があります。離陸決心速度に達するための距離は当然のことながら飛行機の大きさによって変わります。また、同時に同じ機種でも重量が増えるとその分長さが必要になります。

もう一つは、着陸するために必要な距離です。一般的に旅客機の着陸直前の速度は時速200km/hと言われています。

この速度は、先般発生した徳島空港での「重大インシデント」。管制の連絡ミスにより着陸しようとした旅客機が滑走路にいた車とあわや激突というところを、パイロットの機転で事なきを得たというトラブルで知られるようになりました。

ともあれ、時速200km/hで着陸した飛行機が減速するまでの距離が必要です。

最後に、離陸のために滑走中の飛行機が、その途中に何らかのトラブルで停止しなくてはならなくなったときに、滑走路を飛び出さずに安全に停止出来るだけの距離が必要となります。

3,000mの滑走路をまるまる3,000m使うことはできないので、これまで使えたC滑走路の距離は2,500mでした。それが、360m長くなったことで3,000m使えるようになります。3,000m使えるとどうなるのかというと、ボーイング747の長距離便やエアバスA380のような超大型機も離陸できるようになるということです。

ボーイング747でも近距離便であれば2,500mあれば十分だったので、これまでも離陸が可能でした。それが今回3,000m確保されるようになったことで、太平洋を挟んだアメリカまでの便も離陸できるようになりました。

C滑走路の延伸は海側に向かって行われ、離陸位置も伸ばされた海側に変更されました。これは周辺住宅地への騒音被害を抑えるためです。これにより、騒音対策のためにこれまで深夜・早朝出発便はD滑走路しか使えなかったのが、C滑走路の離陸制限も緩和されるようになります。

深夜・早朝でも使ええるD滑走路は2,500mしかないので、これまで大型機は離陸できませんでした。それが、C滑走路の離陸制限が緩和されることで、深夜・早朝にも大型機を運用できるようになります。

深夜・早朝にも長距離便が離陸できるようになること、そして、大型機の運用で運べる人数が増えることで羽田空港の利便性はますます高まります。

たかが360mの延伸ですが、この延伸がもたらした恩恵を考えると、非常に大きな360mだと言えるでしょう。

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